リーセシルとリーフレア
「す、凄い。一瞬にして3体もの巨人を、炎で焼き倒すとは……!?」
別働隊の隊長は、赤毛の英雄の偉業に驚きを隠せなかった。
「クッソ、避けきてねえ!」
すると巨人の別の固体が3匹、クーレマンスと隊長の前に立ちはだかる。
「オレさまだけなら、何とでもなるが……」
『グモオオオォォォーーーーーーッ!!!』
ミノタウロスが戦斧を振り上げた瞬間、2人の少女がクーレマンスの前に現れた。
「プロテクション・バリア!!」
「プロテクション・バリア!!」
2つの可愛らしい声が完全に重なり、展開された魔法結界が巨人の一撃を跳ね返す。
「もう少し魔法を温存して置きたかったですケド、仕方ありませんね。姉さま」
「うん。それじゃあの魔法……行くよ、リーフレア!」
双子の姉妹は互いの顔を見合わせ、呪文の詠唱に入った。
「暗がりより舞い降りし、異形の獅子よ。炎のたてがみを燃やし、我が周りを駆けよ!!」
まず双子の姉が、炎の獅子を召喚する。
「あ、あの魔法は、灼熱の高位魔法『ゾラ・エゼディス』ではありませんか!?」
リーセシルの詠唱を聞いた隊長が、クーレマンスに質問した。
「オッサン、魔法に詳しいのか?」
「はい。わたしの妻は、王宮魔道師なのです」
「な……に?」
巨漢の筋肉男は、別働隊の隊長が妻帯者である事に驚き、少し気分を慨す。
「妻の話では、ゾラ・エゼディスは強力な反面、3分を超える詠唱が必要であると聞き及んでいます。それまで魔法結界が持ってくれるかどうか……」
「そいつぁ心配ねェぜ、隊長さんよ?」
隊長が振り向くと、そこにいたのは赤毛の英雄だった。
「それは、どうしてですか、シャロリューク殿?」
「あの姉妹は、魔法を分解して詠唱してんだ」
「は、はあ」
的を得ない英雄の説明に、意味を理解できな様子の隊長。
「あの二人はね。完全に役割を分割して、魔法を詠唱してるの」
幼馴染みの説明下手を見かねた少女が、赤毛の英雄の説明を補完する。
「妹のリーフレアが魔法力場の構築を担当して、そこに姉のリーセシルが高位魔法を叩き込むのよ」
「風の王、炎の王、我が力場にて渦を巻け。闇の王は、黒き地獄の炎を巻き上げよ!」
リーフレアの詠唱によって、緻密な魔法力場が次々に構築され、姉の呼び出した炎の獅子はその中で、最大限の爆炎と化す。
「力場構築は、地味な基本詠唱の繰り返し。対して高位魔法を操るのは、天才的な魔法の才能がモノを言うと聞きました」
隊長は、妻から得た知識を語った。
「そうね、姉のリーセシルは、普段はホワホワしてるケド、魔法の天才なの。妹のリーセシルは、姉程の際立った魔法の才能は無いものの、努力でそれを補っているのよ。いわば天才肌の姉と、秀才肌の妹のコンビネーション魔法ね」
その間にも説明通り、リーフレアによって展開された魔法力場が完成し、そこに、リーセシルの超・高位の灼熱魔法『ゾラ・エゼディア』が炸裂する。
「こ、こんなにも早く、超高位魔法が!」
「あ、あり得ないスピードだ!?」
驚く兵士の間を高温の熱風が駆け抜け、闘技場の閉ざされた力場内に爆炎が広がる。
中にいたミノタウロスをはじめとした、巨人の群れは完全に消滅した。
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