蒼い髪の少年と双子姉妹
舞人が市場までやって来てみると、瓜二つな顔の少女が二人ゴソゴソと、『因幡 舞人・武器屋』のあった辺りをイジくり回していた。
「……え~っと、キミたちここで何をしてるのかな?」
「ふぎゃあああぁぁーーーッ!?」「わたし達は決して怪しい者ではありませんんんーーーッ!?」
後ろから急に声をかけられた少女たちは、パニックになってペコペコ頭を下げている。
「ここ、ボクが前に店を出していた場所……と言っても、出店したのは一日だけだから、知らないか」
「そ、そう?」「勝手に、ゴメンなさい!」
双子の少女たちが顔を上げると、四つの瞳に蒼いボサボサ髪の少年が映った。
「……んなッ!?」「あ、貴方はッ!?」
みすぼらしい田舎娘に変装していた双子司祭は、血相を変えて少年から離れると、広場の木の裏に隠れてヒソヒソ話を始める。
「リーセシル姉さま! いきなりビンゴじゃないですかぁ? あの時の、蒼い髪の少年ですよ!」
「だね~、リーフレア……でも『ガラクタの剣』は持って無いよ?」
双子は顔を見合わせた。
「どうしましょう? もしかして、他人の空似って可能性もありますし……」
「シャロが言ってた、『黒髪の女の子』もいないね。少し泳がせて、調査を続行してみる?」
「そう致しましょう、姉さま」双子は、引きつった笑顔をブラ下げて、少年の前に戻ってきた。
「ボクは、因幡 舞人。ひょっとしてキミたちも、泊まるところが無いの?」
少女たちのみずぼらしい姿を見て、舞人なりに二人の心の内を考えての質問だった。
「……へ?」「えええ……ええ、ま、まあ」双子は、曖昧な返事を返したす。
「ボクと同じだね。良かったら、ここで寝ない? 幸い、誰かが置いてった資材やら、屋台の材料とかあるし。ボクの土地に勝手に置いてったんだから、一晩くらい使わせて貰っても問題無いだろう」
そう言うと少年は、屋台になるハズだった棒や布切れを、器用にテントとして組みあげた。
「……あッ、あああ、あの!?」「さ、流石に男の人と一緒に寝るのは……チョット!?」
「テントはキミたちで使ってくれ。ボクはボロ布にでも包まって、外で寝るからさ」
「そ、それじゃあ」「お言葉に甘えて」「そうだ、ちょっと待ってて」
舞人はフラリと出て行くと、そこらの屋台で買ったココアを二つ手に持って帰って来た。
「これ飲みなよ。あんまり手持ちが無くて、大したモノも買えなかったんだケド……」
「ア、アリガト……舞人」「あり難くいただきます」双子姉妹は、ココアを口に運んだ。
「キミたち、やっぱ双子だよね? 歳はいくつ?」「うん、双子だよ!」「年齢は十六です」
「え、ならボクより年上じゃん! 何か偉そうにしてゴメン」
「いいっていいて」「姉さまが偉そうですよ」妹にたしなめられる姉。
「やっぱ、仲がいいんだね」「そうかな?」「二人っきりで生きてたときも、ありましたから」
「それじゃ、お休み」「うん」「お休みなさい」
少年がボロ布に包まりながら、星灯りの下で眠りに就く。
それを確認したリーセシルとリーフレアは、テントの中で小声の相談を始めた。
「悪い人じゃ~無さそうだいねェ? ……優しいし、どことなくシャロみたい」
「それは言い過ぎですよ、姉さま。でも今のところ、普通の少年にしか見えませんね」
双子はテントから顔を出すと、少年の近くにたき火を積んで、低級の炎の精霊を召喚した。
「朝までお願いね」「このコが風邪をひかないように、頼みます」
炎の精霊は、焚き木を燃焼させることなく燃え続けて、少年を暖める。
「それじゃ明日、お城に戻ってみんなに報告しよう。おやすみ、リーフレア」
「そうですね……おやすみなさい。リーセシル姉さま……」
街の灯りがポツポツと消えて行き、双子が眠りに就く頃には、星が一層キレイに瞬き始める。
「……リーセシル姉さま、起きて下さい! 何だか外の様子がヘンなんです!!」
寝静まってから何時間か過ぎた後、双子の妹は辺りの様子がおかしいのに気付き、姉を起こした。
「なあに……リーフレア?」姉が目を開けて見たテントの布は、青白く揺ら揺らと発光している。
「な……なに、コレ!?」「ま、街が……燃えています!!?」
双子がテントから顔を出すと、辺り一面に『青白い炎』がほど走っていた。
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