ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第4章・7話

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死霊の王

 遠くで立ち昇る煙に、恐怖と混乱で逃げ惑う人々の悲鳴が混じって聞こえる。

「一体、何が起きたの。リーフレア!?」
「わかりません! でも、この魔力……まさか、あの少年のモノなのでしょうか?」
 双子は顔を見合わせたが、その『答え』はすぐに不正解だと解る。

「二人とも無事? 早く逃げて! おかしな『骸骨』が街を襲ってるんだ!!?」
 蒼い髪の少年が二人を心配して、街の住人が逃げるのとは反対の方向に走って来た。

「ま、舞人!?」「どこに行ってらしたんですか!?」
「街の中心付近が騒がしいんで、見に行ってたんだ。そしたら、ホラ……!!?」

 双子姉妹が、少年の指さす方を見る。
『黒い荘厳なローブを来た骸骨』が、青白い炎を身に纏いながら街を焼き払っていた。

「我は、死霊の王『ネビル・ネグロース・マドゥルーキス』なるぞ!!!」
 骸骨は、カタカタと下あごを鳴らしながら息巻いた。

「今まさに、二千年の永き眠りより目覚めたのだ! 人間どもよ、恐怖に震えるが良い!」
「キャー!!」「イヤー!」「ひぃぃ!?」
 死霊の王ネビルは言葉通り、街の住人に恐怖を振りまいていた。

「姉さま、あれは高位のアンデッドです!」
「マズイよ。目覚めたばかりで高揚しちゃってるのか、辺り構わず破壊しちゃってる!?」

「なにしてるの、早く逃げないと! もたもたしてたら、消し炭にされちゃうよ!」
 舞人はまだ、その場に留まっている双子の姉妹に、避難するよう促す。

「……舞人。わたし達は戦うよ」「貴方は安全な場所へ、避難してください」
 事も無げに言ってのける、田舎風の双子姉妹。
「何言ってんの。そんの無茶だよ! 普通の女の子が、あんな化け物と……」

「リーフレア……『死者をも焼き尽す炎』で行くよ!!」「了解です、姉さま!!」
 しかし舞人は直ぐに、彼女たちが『普通の女の子』で無いことに気付かされる。

「『九騎の炎の剣王』たちよ。我が求めに応じ、その力を貸し与え賜え!!」
 眼鏡の妹が魔法の詠唱を始めると、空中に『紅い色の立体魔方陣』が展開された。

「燃え盛りし門を潜り抜け、我の前に降臨せよ! 紅き龍の王・名は『サラマンディーズ』!!」
 普段のホワホワした雰囲気からは想像もつかない、キリッとした表情の姉が、魔法の詠唱を終えると、紅い立体魔方陣から『紅き龍』が姿を現す。

「す、すごい!? 赤いドラゴンだ!!」舞人は、目の前で繰り広げられる光景に驚愕した。
「……ヌウ。炎のドラゴンを召還しただと!? 我を、焼き滅ぼそうというのか?」
 死霊の帝王も、姉妹が召喚したドラゴンに気付き、迎撃態勢を取る。

「『スコーチング・ヒート・フレアー!!!』」姉妹は言葉を合わせて叫んだ。
 紅い龍は、黒いローブを着た骸骨に向って『灼熱のブレス』を浴びせる。

「グヌワアアアアアアァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!?」
 煉獄の如き高温ブレスに焼かれた骸骨は、一瞬にして灰となり消え失せた。

「キ……キミ達は……一体?」戦いを終えて戻って来る姉妹に、舞人は声をかける。
 すでに変装は解かれ、二つの『薄いピンク色の美しい髪』が、炎で巻き起こった風に靡いていた。

「黙っていてゴメンね、舞人くん。わたしは姉の『リーセシル』だよ」
「リーセシル……って、まさか『覇王パーティー』の!?」
 一瞬、言葉を失う舞人。

「うん。『リーセシル・ヨングフルート』だよ。クラスは『サモニング・ビショップ』。召還魔法の使える司祭だね」
 司祭の姉は、ニコッと笑った。

「それじゃあキミが、リーフレア……?」もう一人の司祭に尋ねる舞人。
「はい。わたしは、妹のリーフレアです」
 メガネの少女は、申し訳なさそうに微笑んだ。

「本名は『リーフレア・ヨングフルート』。クラスは『エレメンタル・ビショップ』です。姉さまとは少し違って、精霊魔法と力場構築魔法を得意としております。舞人さん」
 妹のメガネをかけた司祭も、優しい微笑みを見せる。

 憧れの『覇王パーティー』の二人を前に、舞人はしばらく立ちつくした。

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